カマせ!魂のターンテーブル

6月5日、父方の祖母が亡くなった。2日遅れて留学先のロシアで訃報を知った。

 

昨年の夏頃に体調を崩し、2年ほど入居していた老人ホームから総合病院へ移った。余計な心配をかけてはいけないから、と祖母が留学中に亡くなっても私には知らせない約束だった。5月末に両親とスカイプで話したときには覚悟を決めるように、と言われていたので、ある程度心づもりは出来ていたつもりだった。でも、どれだけ準備しても人の死を受け入れるのは簡単じゃない。手を握ってあげたかった、ありがとうって言いたかった、最後の瞬間までそばにいてあげればよかった。6月末に祖母の遺影と一緒に母がロシアへやってきた。アマゾネスみたいに激しいおばあちゃんが見たこともないような穏やかな笑顔で映ってて、なんか泣けた。なんでも10年ほど前、公民館で遺影撮影会があったらしい。高そうな着物はCGだった。CGて!ハイテク老い。そういえば留学中、何度か死を覚悟する瞬間があったので、とっておきの自撮りを何枚か用意し遺影フォルダを作成していたが幸いにも役に立つことはなかった。【ロシア留学中に亡くなったこの女子大生かわいすぎワロタwwwwwww】っていうスレが立つこともなかった。いやそこは立てよ。嘘でも良いから立ってくれ。

 

帰国して実家を見てぶったまげた。玄関入ってすぐ左手の和室がクラブになってた。

おひな様の段飾りみたいな華やかな仏壇の中心にドンと置かれた祖母のコンピューターグラフィック遺影。その両脇にたつボンボリがめ〜っちゃくちゃ派手なのだ。七色の光りを放ちながらくるくる回る姿はまさしくミラーボウル。「おばあちゃんただいま〜!」スウェーデンで買ったミックスナッツの袋を供える母。ミックスナッツ!若い!こんなオーガニックなお供えものなかなかないと思う。「お腹空いた?バナナあるで!」お供え物のバナナをこちらによこす母。いや食べにくい!別に嫌いじゃないしむしろ好きなんだけどなんとなく食べにくいもの第一位であるところの仏壇に供えられていた小さめのバナナやめてくれ〜!普通に食べた。食い意地が道徳を殺した瞬間だ。

 

夕食の後は御詠歌タイムだ。西日本にある33カ所の霊場にまつわる短歌を故人の命日から四十九日まで毎日詠む。極楽までの道案内なんだって。ブラトップで御詠歌を詠んでいたら「乳首見えてる!」って母親に怒られた。御詠歌は乳首NGらしい。先に言っておいてほしかった。Tシャツを着て途中から参加したところ、母親の様子がおかしい。ところどころ詰まっていたと思ったら突然黙ってしまった。長旅の疲れが出たのかと思って「大丈夫?」と顔を覗き込んだところ、寝ていた。寝るな〜〜〜〜〜〜!!!道案内するんちゃうんかい!「気持ちよくなっちゃって・・・」いや御詠歌中にトリップすな!亡き祖母を偲んでしんみりした気持ちで詠んでたのに、テンパる母親が面白すぎて絶対に笑ってはいけない御詠歌24時になってしまった。「おばあちゃんもあんたの笑い声が聞けて喜んでるわ!」と母。もちろんその間もミラーボウルは回りっぱなし。部屋に鳴り響くグルーヴィーな鈴の音!チンチンチンチン!オンDJ実父!REC何の何?フリースタイルダンジョンの収録かと思った。終始和やかなムードではじめての御詠歌詠唱は終わった。こんなカジュアルな供養あるかよ?!もっと涙ながらにやるもんちゃうんかいと思ったけど、無理にでも笑顔で送り出そう!という気概が愉快で、ちょっと切なかった。

 

そして昨日無事四十九日を迎え、納骨を済ませた。ぴかぴかCG遺影のおばあちゃんは前に見たときよりもずっと綺麗だった。無事極楽ついたっぽい。よかった〜。

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